【LAタイムズ名コラムニスト】もし、大谷翔平が無人のグラウンドで打ったら/連載2

メジャーが開幕して1カ月。昨オフ、世界中の注目を集め、スポーツ選手としては史上最高額の10年7億ドル(当時レートで約1015億円)でドジャース入りした大谷翔平投手(29)の移籍は、米国社会、そして球界へどんな影響を与えたのか。プラスもあれば、マイナス面もあるスーパースターの移籍。地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」で健筆を振るうコラムニスト、ディラン・ヘルンデス記者(43)が本紙特別寄稿「Hot&Spicy」で、社会背景と裏事情を語った。

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◆ディラン・ヘルナンデス(日本名=渡辺修) 1980年7月7日、米カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。父はエルサルバドル、母は新潟県見附市出身の日本人。UCLA(カリフォルニア大ロサンゼルス校)では歴史学を専攻。「ボストン・グローブ紙」などでのインターンを経て、卒業後の02年「サンノゼ・マーキュリー紙」に入社。07年から「LAタイムズ」のドジャース担当を務め、16年からコラムニスト。家族は、妻と1女1男。

■とてつもないプラス効果

大谷がドジャースの一員としてデビューして以来、約1カ月が経過した。スーパースターの去就は、周囲に多大な影響を与えるものだが、大谷の移籍はド軍だけでなく、球界全体に、とてつもないプラス効果を生んだと言い切っていい。

日本では野球が最も人気の高いスポーツだが、米国ではNFL(アメフト)、NBA(バスケットボール)もあり、野球は基本的に地元主体のスポーツ。ポストシーズンでない限り、全国的に注目される試合は少ない。

そんな状況を考えていると、今回、大谷が史上最高額の条件でド軍入りしたことで、1つのフレーズが頭に浮かんだ。

「If a tree falls in a forest and no one is around to hear it,does it make a sound?」

これは哲学の命題で、直訳すると「もし、森の中で1本の木が倒れ、誰もその周囲で聞いていないとすれば、音はしたことになるのか」。日本語ではかなり伝わりにくいのかもしれない。

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